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機動城塞サラトガ

 ~銀嶺の剣姫がボクの下僕になった~

地龍のダンジョン奮闘記!

​著者名

イラスト

発売日

ISBN

出版元

ERIMO

2016年8月15日

978-4891993818

 砂洪水(フラッド)と呼ばれる恐るべき自然災害が存在する一面砂漠の国、エスカリス=ミーミルが舞台。人々は災害から逃れるために、都市ごと砂上を移動できる〝機動城砦〟を建造していた。
 また、機動城砦に住む者たちを貴種(ノブル)、オアシスで定住する者を非貴種(イルノブル)、砂漠で移動生活する者を地虫(バグ)と差別する。
 そんな中、砂漠で生きる地虫の主人公ナナシは、何故か機動城砦に攫われた義妹のキサラギを救うべく物語は動き出す。
 
 要点を切り出せば『妹を助ける旅に出る』なのですが、仮想敵は一都市丸ごとで、ただの一個人が相手にするには余りにも無謀な相手。普通なら『相手が悪い』と悲嘆に暮れて受け入れるのが関の山の中、一切の躊躇なく救出に向かうのがこの作品の主人公ナナシ。
 ある意味王道的展開ではあるものの、自身よりも他者を優先するその精神性はかなり危うい。
 命知らずにも砂上を移動し続ける〝機動城砦サラトガ〟に取り付き、何十mもの城壁をよじ登る始末。しかし身体能力が特段優れているのかと思えば実は考えが浅いだけで、フリークライミング中に何度も後悔するといった場面もあり人間味を感じさせます。
 走る貨物列車に乗り込むようなものなので、命知らずの表現では足りないかもしれませんね。
 
 人間味と言えば、ナナシが侵入したサラトガで出会う相手は誰も彼もが特徴的。
 12歳という若さで領主を務める攻(ツッコミ)守(ボケ)に万能なミオや、その側近でシリアスと日常パートの差が尋常ではないキリエとその妹で幹部フロアの家政婦ミリア。知識人で巨乳枠の筆頭魔術師シュメルヴィは無駄に妖艶だし、銀嶺の剣姫の異名を持つクールビューティなマスマリシスは意外と天然、と華は咲き乱れています。
 かと思えばイケメンなのにロリコン将軍メシュメンディ、勘違い系貴族のグスターボ、エロ親父のボズムスと男性陣も層が厚い。
 
 こうして単にキャラの概要を挙げただけでも属性過多で、お互いを食い合いそうな個性を持つ者同士。ギャグパートの掛け合いは想像するだけで楽しそうでしょう?
 また、彼等は重鎮中の重鎮で、当然のように機動城砦サラトガの運営に関して多くの重要な会議をこなすわけです。が、このメンバーで行われるシリアスシーンを思い浮かべてみてください………どうです、想像できましたか?
 
 ここで少し本文から離れ、最初に目に入るラノベの顔にフォーカスしてみましょう。
 ERIMOさんが描くサラトガのカバーは、単語だけではさっぱり分からない機動城砦が背景。さらにミオの躍動感、大剣を掲げて構えるマスマリシスに、彼女を守るような位置取りのナナシが描かれています。
 単に『上手いな、綺麗だな』といった感想を持ちますが、読んだ後にカバーに戻ってくると、配置や態勢がそれぞれの人物像と合致するのが驚きです。
​ 是非ともカバーを目に焼き付けて読み始め、閉じた時に改めて見直してみてください。
 さて、紹介もそろそろ終幕です。
 プロローグの時点でもやしが感心したのは表現の豊富さ。そして得られる情報量と比べ、遙かにテンポ良く進む物語は読みやすい。ただ、物語が始まる理由が義妹なのに、本人が登場することもなく終わるのが印象的で、むしろ『どんな義妹なの?』と想像が膨らみます。
 ちなみにもやしが感じた最大の謎は解けぬままでしたので、二巻に非常に期待を寄せています。
 
 それでは先ほどのシリアスシーンが思い浮かんだ方も浮かばなかった方も、Web版・書籍版どちらのリンクも用意していますので、是非答え合わせをしてみてください。
 読書に使った時間が『無駄だった』と後悔させませんよ。
 もやしは発売された二巻を手に、著者の円城寺さんにサイン貰いに行ってきます! できればERIMOさんのサインとかもらえないかなぁ…?
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